俺様富豪と甘く危険な恋
「どうぞお飲みください」

「い、いただきます」


サングラス越しにずっと見つめられているようで、栞南は居ごこちの悪さを感じながらコーヒーカップに手を伸ばした。

震えて力が入らない指先のせいでカップがぐらりと落としそうになってしまった。

急いでソーサーにカップを戻そうとしたが、ガシャンと陶器がぶつかる音と共に熱いコーヒーが手に飛び散る。


「ぁつ!」

「大丈夫かっ!?」

栞南の小さな悲鳴と同時に蓮が腰を浮かしたが、すぐにハッとなり再びソファへ座った。


「相変わらずドジですね。こちらへいらしてください。少し冷やしましょう」


ダニエルに言われた栞南はキッチンへ行き、水で右手の甲を冷やされる。

水が当たる手を見ながら、栞南は今のことを振り返っていた。


(「大丈夫かっ!?」って、心配そうだったのはどうして? 私を好きじゃなくなったのならそんな言葉はかけないよね?)


まだ蓮を好きだから、すがるような気持ちが出てきてしまうのだ。

栞南は否定するように首を左右に振った。


「もう……大丈夫です」


蛇口を止めると、タオルが右手にあてられた。

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