俺様富豪と甘く危険な恋
「明日の朝、上司に電話をしろ。香港で盲腸になり手術と療養で半月は日本に帰れないと」


蓮は片方の膝をつき、栞南の顎をクイッと持ち上げる。栞南の目は涙のせいで赤くなっていた。

蓮の黒曜石のような瞳に見つめられる。

こんな状況でなかったら、栞南の胸は壊れそうなほど高鳴っていただろう。だが、今は何も感じない。感じるのは恐怖だけ。


(説明の仕方がまずかったな)


蓮は栞南の様子に後悔した。


「水野栞南、巻き込んだ以上、俺がお前を守ってやる」


頬に伝わる涙を蓮の指に拭われた栞南の目が大きく見開いた。


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