俺様富豪と甘く危険な恋
「レン！？　まさかっ！」


会ってからの蓮の動きに違和感があった。ダニエルが付き添い助言をしてもらいながら動けるようになったのだと思っていたのだが……。


「その服を着てくれて嬉しいよ」


蓮は食い入るように自分を見ている栞南に優しく微笑む。


「もしかして……レンっ、見えるの？　私が見えるのっ！？」


ベッドの端に座らされていた栞南は思わず立ち上がり、蓮の目の前で手を振る。


「そんなことをしなくても大丈夫だ。お前の顔がよく見える」


蓮は目の前で振られていた栞南の手を止めて握る。


「……どうして……？　いったいどうして？」


もう二度と蓮の瞳に自分は映らないものだと思っていた。今、蓮の黒曜石のような瞳に自分が映っている。


「角膜移植を受けたんだ」

「角膜移植……半年前も手術するつもりだったの？　見えるようになるのに、話してくれずに、どうしてこんなに待たせたのっ！？」


栞南は教えてくれなかった蓮にだんだんと腹が立ってくる。それほどまでに自分の存在はどうでもよかったのかと考えてしまい、怒りからベッドから立ち上がり寝室を出て行こうとする。
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