俺様富豪と甘く危険な恋
「楽しいこと、やりたいこと、言いたいこととは? 全部言えたら出来る範囲で叶えてやるよ」


ソファを背に、片方の足をたてている姿は見惚れるほど絵になっている。


全部叶えることなんて無理だ。そう思いながら栞南は一呼吸おいてから口を開いた。


「やりたいことはもっと色々な国に行きたかったなって。言いたいことは元カレにもっと怒りを爆発させればよかった……」

「あぁ……付き合っていた男と別れたんだったな」

「常務の娘と二股かけられていたんです」


真剣に聞いてくれるから、忘れたかった二股の件も話していた。


「私、そんなに魅力がない女だったのかなって……いろいろ聞きたいし、ふざけるな。バカ野郎って色々ののしりたい。あ、おかわりください!」


今度は氷だけ入ったグラスにスコッチが半分ほど注がれる。


「少しずつ飲めよ」


栞南が飲もうとすると忠告される。仕方なしに一口だけ飲み、テーブルに置く。


「楽しいことは?」


そう聞くと、蓮も一口飲む。


『お前とのセックスなんてこっちから願い下げだ。もったいぶる女は嫌いなんだよ。梨花のセックスが楽しいし最高だよ』


別れ際孝太郎が言った言葉を思い出してしまった。

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