俺様富豪と甘く危険な恋
涙腺が緩みそうになって、急いで目を擦る。


「ああっ! もう! 情けないっ!」

「何が情けないんだ?」

「もったいぶって、孝太郎とセックスしなかったことですっ。もし……もし、私このまま死んだら、バージンのままですよ? バージンの……」


初めてみる呆気にとられた顔の蓮だ。そんな蓮の顔に気づかず、栞南は先を続ける。


「セックスって楽しいんですか? あ! 朝日奈さんに聞いても無駄ですよね。楽しくなかったら、あんなにたくさんの女性とデートしないですもんね」


酔っぱらって、普段口にしない言葉がポンポンと恥ずかしい気持ちもないまま出てくる。

涙でかすむ目のまま、グラスに手を伸ばし飲み干した。途端に目の前がグラングランと揺れ始める。

持っているグラスは奪われた反動で、ソファに頭がぶつかる。


「このまま飲むと悪い酒になるぞ」

「あー私って嫌な女! 私っ、ぜーんぶ言いました! 何を叶えてくれるんですかっ!? ジーニーさん」


むくっと頭を上げて言うと、再びソファに頭を置く。


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