俺様富豪と甘く危険な恋
部屋を出た瞬間、栞南の足がぎくりと止まる。

蓮がダイニングテーブルで食事をしていたからだ。いないと思っていた栞南は部屋に戻ろうと一歩下がる。


「意外と早いな」


後ろを向いているのに、自分の気配に気づいている蓮にギクッとする。


「飲み物はなにをお持ちしますか?」


その場で突っ立っていると、通りすがりにきびきびした動きのダニエルが聞いてくる。


「あ、コーヒーをお願いします」


反射的に答えると、もうダイニングテーブルに行くしかなかった。


「おはようございます」


栞南は蓮に声をかけていつものように席に座ると、コーヒーがテーブルに置かれた。


(なんか気まずい……)


ちらりと蓮に視線を向けてみれば、彼は新聞を読んでいて表情が見えない。とりあえず見えないので、栞南はホッとした。

栞南がホッとしたのもつかの間、コーヒーを口にすると――


「酒癖が悪いんだな」

「ゴホッ! ゴホッ!」


コーヒーを噴き出しそうになって無理に飲み込み、あっけなく器官に入り咳き込む始末。

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