俺様富豪と甘く危険な恋
「飲み込みが悪いのか? いつも咳き込んでいるぞ」


新聞に視線を落としたまましれっと言われ、栞南は苦しい咳が止まるのを待って口を開く。


「わざと飲むときや食べているときに言うからじゃないですかっ!」


キーッとムキになる栞南に楽しげに笑う蓮は新聞を畳む。蓮の前を見ると、食事は終わっていたようで、コーヒーカップだけがある。

言い返さないのはその自覚があるからだろうか。

ダニエルがやってきて熱々の目玉焼きとベーコン、トーストが置いて行かれる。


「冷めるぞ」

「……いただきます。今日は出勤遅いんですね」

「今日は土曜日だ。これから出かけてくるが、戻ったら一緒に出かけるぞ。そうだな……15時までに用意しておけよ」

「ええっ!?」

「なにを驚いているんだ?」


席を立った蓮は驚く栞南を見る。


「出かけるって、私がですか?」

「そうだ」

「でも、狙われているんです。あぶないじゃないですか」

「まあな。支度をしておけよ」


栞南の心配をよそに蓮はスラックスのポケットに手を入れて自室へ消える。

どこへ出かけるのか、全く見当もつかず栞南は不安だ。でも、蓮が自分を危ない目に合わせはしないだろうと、信用もしていた。

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