俺様富豪と甘く危険な恋
「朝日奈さん! あれはトラムですよね!?」


トラム全体に女性とヘアケア商品が映し出されており、走る広告みたいだ。

今見るだけでも同じ広告のトラムはない。

有名ブランドの時計の広告もあれば、美味しそうな点心の写真もある。見ていて楽しいおもちゃみたいな乗り物だ。


「ああ」


栞南は窓におでこをピタッと寄せ、興奮気味に見ている。

子供みたいなその姿にいつの間にか蓮の口元は緩んでいた。

バックミラーからその様子を見るダニエルは無表情だが、心から楽しそうな蓮の笑みを内心意外だと思っていた。

デートの送り迎えをするダニエルだが、蓮のこんなに楽しそうな顔を見たことがない。蓮は何を考えているのかわからないくらいにポーカーフェイスなのだ。

今までの蓮は公私とも女性と頻繁に出かけていた。

裕福な暮らしをしている蓮に近づく女性は後を引かない。

蓮の容姿に惹かれる女性が大半だが、付き合っていくうちに財産にまで目がくらんでいく。朝日奈家に嫁げば一生苦労せずに暮らせる。それどころかイギリス、香港、ハワイと自宅があり、夫は宝石商、この上なく豪華な宝石を自分のものにできると欲が出てしまうようだ。



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