俺様富豪と甘く危険な恋
「これを試着して来い」


見るとノースリーブで上品なドレスワンピ。


(これが私に似合うとでも思っているのだろうか……)


「私には似合いませんから時間の無駄です」

「3分でこれに着替えてこい」


ドレスワンピを手にもたされると、ミスターリーがフィッティングルームへご案内しますとすかさず誘導される。


「さ、3分じゃ無理ですからね!」


しぶしぶミスターリーの後に付いて行く。


シャンパンゴールドの艶やかなサテン地のドレスワンピ。

こうして鏡に自分の姿を映してみると、ウエストを絞らずストンとしたデザインの前身頃は、膝頭が出るくらいの長さで、後ろはふくらはぎとまではいかないが、緩やかなドレープを描き女らしい曲線を醸し出している。


(さすが高級ブランド……)


庶民の自分がセレブのお嬢様になったかのように見える。そして心なしか足がスッと長い気がする。


「5分経ったぞ。さすがにもう着替えただろ?」


フィッティングルーム向こうからの蓮の声に栞南は我に返る。


「い、今出ます……」


おそるおそるフィッティングルームのドアを開けて顔を覗かせると、ドレスワンピより濃いゴールドのハイヒールが用意され、「履け」と蓮に言われる。

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