聖夜の忘れ形見
決意
ぎくしゃくしたまま月日が経ち、世間は年の瀬を迎えていた

仕事が立て込んでいたこともあって、小夜と会う機会が少なくなっていた虎太郎だが、プレゼントは時間を見つけて買ってある

今年はクリスマスイブが運よく休日で、小夜を自宅に招いて一緒にクリスマスを祝おうと前々から約束していたのだ


女物はよく分からないが、気に入ってくれるんだろうか…


真っ白な舶来のシルク傘

小夜の1年分の小遣いでも買えないような高価なものだが、高給取りの虎太郎は高い方がいいと思い込んでいた


「坊ちゃま、小夜さんがお見えになりましたよ」


襖(ふすま)の向こう側から聞こえる女中の声に、朝目覚めてからずっとソワソワしていた虎太郎は、急いでそれを開けた

目の前に立っている女中も小夜も、勢いよく開いた襖に目を点にして立っている


「あ…。驚かせてすまない」


バツが悪そうに答えると2人は顔を見合わせて笑い、女中は邪魔をしないようすぐにその場を離れた

廊下に人の気配がなくなったことを確認し、小夜を部屋に入れると静かに襖を閉める
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