聖夜の忘れ形見
「虎太郎さん?」


ドキドキしながらも、どうして急に抱き寄せたのかが気になり、自分の頭に顎を乗せている虎太郎を見上げ、声を掛けた

他の人達の視線も痛い


「ん?」


「どうかなさったのですか?」


「………いや、何でもない」


我に返って手を離す虎太郎

会えば会うほど、自制が利かなくなってきている

だからといって会わないようにすることなど、今更出来そうになかった


「…そう………ですか…」


聞けるとは思っていなかったものの、心のどこかで甘い言葉を期待していた小夜は、唇を噛み締める


───『お金のある殿方は、遊郭に通ったりなさるんでしょ?』


貴子の言葉が脳内に響く

その後、屋上庭園に上がったり食堂で食事をし、虎太郎に自宅まで送ってもらったのだが、ほとんど記憶に残っていなかった
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