アイスクリームの美味しい食し方
私、何してるんだろう。

用意されたソファに座り、
高校生に囲まれていた。

今度こそ諦めようって、
決めたのに、
やっぱり家に行っちゃって、
鍵が回らなくて絶望した。

今まで鍵を変えられたことも
電話番号を拒否されたことも
なかった。

だから、やっぱり
諦めなきゃって思ったのに、
弟が初めて好きになった
最愛の彼女を拉致して、
振り回して、
会わせろって騒いだ。

いざ、目の前にいても
足がすくんで何にも言えないのに、
私は何がしたかったんだろう。

いつもそうだ。

忍び込んでおいて、
隠れて逃げて、
いざ会えても、何も言えない。

そんな私を見兼ねて、
ずっと年下のチカちゃんが
私をここまで引っ張り出してきてくれた。

「ランウェイで歩く時って
緊張するんですか?」

可愛い男の子が、
私にそう聞いた。

緊張?

うん、するよ。

もしかしたら、
宗次郎さんが見てるかもしんないじゃん。


「写真よりずっと綺麗ですね。」

当然でしょう?

努力してるもの。
この年で現役のプロポーションを
保つのは並大抵の努力じゃ無理なの。

でも常に努力してるし、
し続けるわ。
宗次郎さんが
私をいつ見てくれるか分からないもの。


「現役女子高生の時の
ATSUKIさんも可愛かったんだろうな。」

そうね。
この制服を着ていた時は、
もっと可愛かったよ。

何にも考えず、
好きだ、好きだと宗次郎さんを
追いかけていた。

相手のことも周りのことも
何にも見えてなくて、
振り回すだけ振り回した。

忠告も心配も聞かず
突っ走った。

だけど素直な気持ちでいられた。

もし、16歳の私が
今の私を見たらなんて言うかな。

「全然綺麗じゃないね、私。」

あれ?
いつからかな。
涙が出てたや。

私は、上を向いて、
涙を戻そうとした。


「綺麗だよ。
16歳の君も。今の君も。」

幻聴かな。

あの人は、
妄想の中でもリアルでも
欲しい言葉しか言わないから
分かんないや。
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