キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「……頭が痛いので早退しますっ」
平尾さんは泣きながら、バッグを持って勝手にお店から出ていってしまった。
パソコンの前で俊がため息をつくと、地区長が彼の肩をたたく。
「矢崎くんに文句言ったって仕方がないのにね。損な役だな」
「いいですよ。これも俺の仕事です」
麻耶ちゃんも会社の都合で辞めさせられたけど、彼女はあんなふうに取り乱したりしなかった。
たしかに35歳でなんの資格も持たずに次のパート先を見つけるのは、なかなか大変かもしれない。
「大丈夫だよ。彼女、いまだに実家で親のすねかじりだから。生活はなんとかなるよ」
杉田さんがしょげた様子で、とぼとぼと補聴器ルームに入っていった。
「じゃあ、僕は行くね。矢崎くん、あとはよろしく」
「はい」
地区長は用が済むと、さっさと次の店舗へと移動していく。
「あの……もしかして、杉田さんも?」
そっと聞くと、俊は声を潜めて言う。
「他の店に応援に行ったとき、他の女子社員のケツを触ったんだと。その子がだいぶ気の強い子で、しっかり地区長に訴えたらしい」
「ひえぇっ」
あれだけ俊にすごまれたのに、他のお店で同じことを繰り返すなんて、杉田さんも学習しないというか、何と言うか……。