キミの瞳に恋してる ~運命の人は鬼上司!?~
「な、なんですか」
「いや……お前、意外と負けず嫌いなんだな」
「はあ」
「やる気はないのにプライドだけは高くて、面白いやつ」
「それは平……あの人ですっ。私は今はやる気ありますっ」
「そうか、そりゃあ良かった。これからも期待してる」
くつくつと喉を鳴らして、店長は笑っていた。
笑うと、目がなくなるんだ。
初めて矢崎店長が笑っているのを見たような気がする。横顔なのが惜しい。
こうして、月曜も終了。
はあ、精神的にも疲れたなあ……。
私はぼーっとしたまま、店を後にした。
途中で振り返ると、二階の寮に灯りがついたのが、窓から見えた。
そういえば、明日は休みだ。
店長は明後日から、愛知の本社に試験を受けに行くんだった。
「ばかだなあ……」
頑張ってくださいね、くらい言えばよかった。
どうして好きな人の前では、素直になることも器用になることもできないんだろう。
私はただただ気の利かないへっぽこな自分を恨みながら、のろのろと駅に向かった。