サイレント
樹里は足を組んで窓の外を眺めた。

もうすぐ夏がやってくる。

そんな樹里にベッドに座っていた一はそっと手を伸ばし、樹里の手を取る。

「ジュリは、胸が痛くならないの?」

「ならない」

素早く手をひっこめようとするけれど、一は樹里の薬指を掴んで離さなかった。

「そう。俺は今でもわからないよ。何で別れなきゃならなかったのか。思い返してみても原因が見つからない。俺、何か悪かったかな」

「……別に、ハジメくんのせいじゃないよ。単に私の気持ちの問題。疲れたの。好きという気持ちが消えたの」

「何故?」

「あなたが、子供だからよ」

指が痺れる。鳥肌が立ちそうだ。

そう。あの時一は子供だった。そして二年経った今も子供。

樹里にしてみれば一に職場を知られたのは計算外だった。

一が中学三年の秋、樹里は学校を辞めて今の病院に勤め始めた。

一にはそのことを教えなかった。

相沢にも、加藤という少女にも口止めしたし、もちろん二人には新しい勤め先を教えていない。

「ジュリは今他に好きな人がいるんだよね」

「いるよ」

「誰?そろそろ教えてよ」
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