エルドラドステージ
それならば…と章は思う。
それならば章とシュウの持つ、一見不必要なこの能力は砂漠では必要だったのだろうか、と。

ずっとずっと…なぜこんな能力を持っているのかわからなかった。
人間とすれ違うことの少ない砂漠。しかしたまに出会えば、その心に渦巻いているのは誰に向かうとも知れない憎しみと悲しみ。それをただ聞いているだけの自分。
自分からも発している悲鳴は同じように誰かに届いているのだろうか。

そんな想いに苛まれ、声にならない叫びを上げ続けていた時、2人と出会った。

彼らも他の誰とも変わらなかった。同じように負の感情が渦巻いていた。

しかし彼らには他の人間が持ちえないものを持っていた。それは他人を飲み込む力。それまで受け止めるだけだった自分。いや、聞こえてくる声を受け流しているだけだったに違いない。

しかし受け止めてくれる人間がいれば、どんなに小さな声も生きる力になれることを知った。

響き合う声に耳を傾けあう、それだけが章を支えた。
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