エルドラドステージ
夢のおわり
「今、僕は全権力を行使してアルカディアの時間を止めました。…いや、濫用して…と言う方が正しいかもしれませんね。」


草も木も花も、雲も風さえも動いていない、不思議な空間。


アルカディアのすべてが眠っているかのようだった。


森の外にいる人たちも止まっているのだろうか。章はふとそんなことを考えたりした。


国定公園の出入り口に来た時、すぐに答えがわかった。


公園の受付の女性の指は、まるでマネキンのようにキーボードのNの字の上で止まっていた。



「彼らが動き出す時、シュウは犯罪者です。」


カイザーは武の腕に抱き上げられ、時を止められたシュウの髪を撫でながら言った。


「シュウは自分の罪を知った方がいいのでしょうか。アルカディアではこれが罪になることを…」


「僕はまだ迷ってるんです。シュウがここに来てからずっと…。ひとりじゃ抱えられなくて、浩二を巻き添えにしました。この、アルカディアの深くて暗い闇に道連れにしたんです。」



「ここに来たばかりの時、浩二は俺たちに言った。アルカディアの光はカイザーが全力で守り抜いているのだと。俺たちもそう思う。アルカディアが幸せであればあるほど、あなたは…あなたと浩二は闇を抱え続けなければならないのだと。…矛盾を感じるのは人間だからだ。あなたも浩二も俺たちも人間だからだ。」



武はカイザーの腕にシュウを渡した。


シュウの身体は子供らしく熱くて軽かった。


カイザーはシュウを抱きしめて「だって、こんなにかわいいじゃないですか」と、いつものセリフで頬を寄せた。



「俺たちと…来るか?」


止まった空を眺めながら登が言った。


「シュウを連れてアルカディアを脱出することは出来ません。…だから…」




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