エルドラドステージ
「アルカディアが呼吸をしていないと外への扉は開かないのです。それはすなわち、脱出にはアルカディアの産みだしたもうひとつの闇を抜けなければ外に行けないということです。」



「森の…奥のこと?」


章はずっと伏せていた顔をあげた。


「章さんはその時、目を閉じ耳を塞いで心を閉じこめてください。決して揺れてはいけません。ひたすら耐えるのです。登さんと武さんのお二人は物理的に襲いかかる蟲を出来る限り章さんに近付けないように、もちろんご自身もやられないように戦うしかありません。」




三人の脳裏に、先程の「彼」の最期が浮かんだ。



「行きはよいよい 帰りは怖い…ってね。なんかの歌であったな。」


登は後ろを振り返りながら言った。


「カイザー。あと…どれくらい時を止められるんだ?」


章の胸に言いようのない想いが広がった。


これは武の想い。


別れの淋しさ。


誰に向けられたものだろう。


武は誰に…いや、どちらに別れを告げるのだろう。どちらを選ぶのだろうか。


ずっとここにいれば…。
このアルカディアの闇に気付かないふりをして、ここにいれば抱かなくてすむ別れだった。別れなんて存在しやしない。ここはアルカディアなのだから。


「武…すまない…。」



登はまっすぐに今来た森の道を見つめて言った。


「俺には、カイザーやシュウの処分を見届ける勇気がない。これからここでやっていける気もしない。本当にすまない。」


登の肩が奮えた。

顔はあちらを向いたままだが、固い決意と涙をこらえた顔をしていることは章も、武も…カイザーでさえわかる。



「わかってるよ。ここは俺たちのアルカディアじゃない。俺は…選ばなければいけないんだ。」




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