君を好きな理由
「そうとう自信家よね?」

「それはたまに言われますね」

「喧嘩になりそうじゃない?」

「たまには喧嘩もするでしょうね。それもまたアリでしょう」


そっか、それは解っているんだ。


解っているなら……


「……とりあえず帰ろうか?」


言ってから歩きだすと、博哉はひょいと眉を上げただけで、小さく笑いながらついてくる。


「受け取ってくれないんですか?」


隣に並びながら、花束を差し出した。


綺麗で鮮やかではあるけれど、華やかと言うよりも、ベルベットのような深い色合いの深紅の薔薇。

……その花束に埋もれている、白い小さな箱を見つけて博哉を見上げた。


「私の特徴のひとつは、やっぱり素直じゃないことなんだと思うのよね」

「存じてますよ」

「そこ存じているなら、私が騒ぎになるような事も嫌がってるのくらい察してくれてもいいのにねー」

歩きながら白い箱を取り上げると、それをバックにしまう。


「…………」


「落としそうだから預かっておく」


「えー……」


「今日は泊まりに行くから、仕切り直しなさいよ」


「…………」


博哉は無言になって、それからまじまじと私を見下ろした。


「いいんですか?」

「まだ返事してないわよー」

「……したも同然と勘違いしますけど」

「しときなさいよ」

「……解りました」


それから沈黙が落ちて、二人で並んで駅に向かい……



それから同時に吹き出した。



「しまらないプロポーズよねー」

「いや。はるかが悪い。あのまま受け取ってくれれば大団円でしたよ」

「嫌よー。あそこで返事したら、貴方きっと私を抱きしめると思うもの」

「……当然じゃないですか」

「い・や・よ」

「天の邪鬼ですねぇ」


苦笑する私に、博哉も苦笑を返す。


もちろん博哉のうちに帰ってからプロポーズは仕切り直され、きちんと返事をしたら噛みつくようなキスをされた。





まぁ、お互い我が儘同士、うまくいくかなんて解らないけれど。

人は変わっていくんだし、私も実は変わったんだろう。

自他ともに“頑固”な私を、折れさせる男がそうそういるとも思えないし。

こんな私を受け入れてくれる男も、そうそういない。




「ところで、はるかからまだ好きだって言ってもらってないんですけど」

まったりとリビングで本を読んでいたら、そんな事を言われた。


「なーにー、聞きたい?」

「まぁ。それなりに。俺のどこが好きですか?」

「全部ね」

「…………」



落ちた沈黙に、読んでいた一行から顔を上げる。


そこに真っ赤になって固まった博哉の顔。


「こ……」

「こ?」

「告白くらい、顔見て言って下さい!」

「言えるわけがないでしょうが! だいたい好きな理由を聞きたがるのは女なんでしょう!?」

「男だって聞きたいです!」

「あんたは乙女か!」


今日もよく解らない喧嘩をしながら、夜は更けていく。



きっと、私達はこんな感じで続くのかもしれない。

それもまた、楽しいと思う。















2015/7/5 完結
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