君を好きな理由
「あ、ごめん。そんなつもりじゃ」

「どんなつもりだったんですか」

お腹を抱える博哉を見て頭をかく。

「えーと……女性の膝蹴り必殺技じゃなくてよかったじゃないの」

それだと男性は、間違いなく沈むか、悶絶するかのどちらかだよね。

「……女性がボディーブローするのも、如何なものかと……」

しまいにはしゃがみこんだ博哉を見下ろして、愛想笑いを返す。

「とりあえず大丈夫? 吐き気とかしない?」

「……しませんけど、少し効きました」

「聞く耳持たない博哉が悪いんだからね。とりあえず今日みたいなのは嫌」

博哉は大きく息を吸って、しばらくしてから立ち上がった。

「まぁ。確かに性急だったのは認めます。しかし……実にアクティブですね、はるかは」

「あまり嬉しくないなぁ」

「褒めてませんよ」

ぼやきながら、お持ち帰りは諦めてくれたようで、しっかり家まで送ってくれてから帰って行った。


……なんだろうな。

そういうところは、やっぱり紳士的だよね。

でも、今日は嫌だったのよ。

そうなる時は、博哉に集中したいもの。

せめて、こんな……

元彼だった男を、唐突に見かけてしまった夜に、なんて嫌だったから……

ごめんね。

















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