\ 王 子 物 語 /
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 7月に入ってすぐだった。

 まだ梅雨はあけてなくて、イライラしてる人もいた。

 なぜそんな季節にしたのかわからないが、クラスの女子が、愛知に告った。

 方法は手紙。

 授業中に手紙をまわしてきて、愛知のとこまでやった。

 その女子はモテモテ気取りの、確かに美人ではある、清香という女子だった。

 どピンクのメモに、

《あいちくんへ

        ずっと好きでした。付き合ってください。返事は手紙で♡

                                      きよか》

 と書いてあった。

 愛知は平気な顔でメモをちぎって、わざわざ立ってゴミ箱まで捨てにいった。

 きよかは、返事をすぐに書いてくれると思ったらしく、ずっと愛知を見ていたが、愛知は全くだった。

「返事は?」

 僕が訊くと、

「は、何で」

 とそっけなく返す。

「直接言うの?」

「言わんし。女なん相手ぇせん」

 確かにモテる愛知だった。

 顔もいいけど、背も高いし、頭もいいし、運動神経もいいし、ダンスとかも得意だった。

 苦手なのは歌うことくらいで。

 女子がふざけてファンクラブとか作ったりしてるのもきいた。

 本当に、そういう人だった。
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