秘密と記憶が出会うとき
いつの間にか、日付は翌日になっていて、祥子は欠席ということになっていた。

雪貴が学校にそう連絡したらしい。


「せっかく数学勉強したのに・・・。」


「しょうがないですよ。
本当に意識がないほど、眠り続けていたんですから。

それに勉強しておいて損になることはありません。」


「そうよね・・・ありがと。三枝さん。
あの、雪貴さんは学校ですか?」


「いや、今日は・・・外出予定がありましてね。」


「そうなんだ。
企業の代表やっていると、すごく忙しいよね。
私のお世話なんて手がまわらないのは当たり前なのに。

私も母のところにもどらないといけないのかも。」


「それはいけません!」


「えっ?」


「あ、コホン・・・あなたのお母様から主があなたの世話を頼まれていることですから。」


「なんで、母から雪貴さんに・・・?」


「正確には貴文様へとご依頼があったんです。
それで、小さい頃からよく存じあげている我が主人へと託されたわけでして・・・。」


「ねぇ、三枝さん?
三枝さんって・・・年寄りクサイって言われない?
見た目だと雪貴さんより若い感じがするんだけど。」


「はい、主人はもうすぐ28で、私は25です。」



「なっ・・・まだ大学出てすぐじゃない!
なんか落ち着きすぎてない?」


「そうでしょうか。
きちんと私は仕事をしていますし、基本は朝と夜だけがあなたの執事なんですが・・・。」


「どうして・・・朝と夜専属の執事なのか?
意味深すぎて聞く気にもならないかも。」


「昼は学校の点検作業に追われています。
校務員やパート職員の勤務状況や仕事ぶりのチェック。
学校の警備の点検・・・これはセキュリティ的なことではなくて、きちんと警備されているかどうかをお世話になっている側の目でみることです。

そしてお嬢様の夕飯までに学校業務を片付けてから、夜はこちらで。」


「ちょ、ちょっと待って。
それだと勤務時間超過しちゃうじゃない。
経営者がそんなことしちゃだめでしょ。
労働時間は守らないと!」


「いいんです。私は時間外勤務手当もいただいていますし、主人は休みはきちんとくれています。」


「そんなことないわよ。
だって、昨日だって私の勉強とかなんだかんだで・・・15時間くらいは働いてるんじゃ。」


「数学の勉強は主人にはナイショですよね。
2人だけの時間を遊んでいることになっている。」


「あ・・・でも、それは・・・やっぱりだめだわ。
ごめんなさい。三枝さんの時間外手当分だわ。」


「いいんですよ。私はけっこう楽しいんです。
最初は家庭教師なんて引き受けていいのかって思ったけれど、
今はその時間が楽しみになりまして・・・学校で働く時間も元気になったくらいです。」


「な・・・そういってもらえると私もうれしいけど・・・。」
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