本日より不倫デビュー致します。
俺は考えていた。

「先生って優しいんですね」

今まで妻からさえもそんな台詞を言われた事は無かった。
そして不覚にも…ドキドキしてしまった…

何よりも城崎の真っ直ぐな瞳に心を打たれた。

(って何考えてるんだ…俺…)

はっきり言って妻との結婚は望んだものではなかった。

その頃には間宮も結婚を決めた相手がいたのだ。

しかし、直前になり婚約者の存在を知らされ、無理やり結婚させられたのだ。


政略結婚とは本当にあったのか。


そう思った。

俺は激しく親父を憎んだ。

しかし、子どもも授かりもうこれで良いんじゃないかと諦めていた。

でも城崎の

「先生が好き……」

彼女の何気ないこの言葉で、気づかされた。

俺は間違っていたのだと。

子どもだって本当はこちらで育てたかったが、妻の母がそれを嫌った。

結局幸せなんて大して得られなかったのかもしれない。

城崎の言った好きと言う言葉が誰が言う好きよりも大事に思えるのは、なぜだろう。

認めたくはなかったが、城崎の事が好きになってしまったかもしれない…

< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop