本日より不倫デビュー致します。
「あの、どうしましたか?」

放課後進路指導室に来たはいいものの、どうすれば良いか分からなくなっていた。

「今日呼んだのは、あれから何かあったかと思って聞きたかったんだ。」

(じゃあ悩んでいるであろう私の為に…?)

「先生は優しいですね」

「なんだ、急に?」

「だって私の事きちんと考えてくれているじゃないですか」

「それは…相談に乗ると言ったからには乗らないとな」

「でも先生には奥さんのお見舞いもしなければならないのに…」

「これは仕事だ。教師として生徒と向き合うのも大きな仕事だ」

先生の顔は夕陽に照らされて美しく見えた。

(やっぱり先生は格好いい…)

等と考えてしまった

「私、父と一言も話していないんです。話さなきゃっていうのはあるんですけど、どう話せば良いものか…」

「まずは挨拶から始めたらどうだ?そこから学校の事とか広い視野に持っていけば、自然と会話が増えるんじゃないかと思うんだが」

「………それは、いいですね。先生はどうだったんですか?」

「俺は……親父と死ぬまで話さなかった。だが、死んでから気づいたんだ。何だかんだ言って俺の事一番に考えてくれたのは親父だったんだな…てな」

先生は悲しそうな目で窓の遠くを見つめていた

(なんなんだろう…この胸のつかえがとれた感じ。それに先生を見る度に感じるこのときめき。やっぱり私は…)

「先生が好き………」

すると先生は驚いた顔をした

(ヤバい!声に出ちゃった!)

「あっ、いやっ、その人間的にって事です!!私に正面から向き合ってくれたじゃないですかっ!」

「そうか……」

(嘘はついていない。私は人間性も全部含めて好きなんだもん。恋愛感情も…あるし…結婚してるの分かってるけど好きなものは好きなんだもん!!!)

すると先生は先生の家で見たあの笑顔で

「ありがとな」

って言ってくれた…
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