幼なじみの溺愛が危険すぎる。
「りりちゃん、いつもありがとう。
でも無理してここに来なくていいのよ?」


ゆっくりとおばさんが体を起こす。


「うちのお母さん、いつも帰りが遅いから
ここでおばさんに会えるのが嬉しいのっ」


おばさんに笑顔で応えて、ベッドの横に置かれたパイプイスに座った。


「おばさん、玲音、この前のテストも満点だったんだよっ。前の日には一緒にテレビ見て笑ってたのに…」


そう言ってプゥっと頬を膨らませた私を見て、おばさんは穏やかに笑った。


「りりちゃんは、そのテスト何点だったの?」


「聞かないで……」


すると、おばさんはクスクス笑いながら私に訊ねた。


「りりちゃん、最近は道場には行ってないの?」


「うん、帰りも遅くなっちゃうし…」


穏やかな表情を浮かべたまま、おばさんはじっと私を見つめた。


「りりちゃん。やりたいことがあるなら、玲音のことなんて気にせずに好きなことをやればいいのよ?」


「私はやりたいことしかやってないよ。
なにより私はここでこうしておばさんに会えるのが一番嬉しいっ」


おばさんと一緒にいると、すごく温かい気持ちになって心が穏やかになる。

私はおばさんと過ごすこの時間がすごく好きだ。


「そういえば、昨日ね…」


おばさんに最近学校であった話や、玲音と盛り上がったテレビ番組の話をしていたらあっという間に時間が過ぎてしまった。


気がつけば窓の外はもう暗くなりはじめていて、

病室前の廊下には配膳車が並び夕食の準備がすすめられていた。



おばさんはどんな話もとても嬉しそうに聞いてくれるから居心地がよくてついつい長居してしまう。


そして、いつものことだけれど家に帰る時間が近づくと少し寂しい気持ちになる。


そんな気持ちを振り払うように明るく笑う。


「じゃ、おばさん、また来るね!
今度は玲音も連れて来るからねっ!」


優しく笑うおばさんにブンブンと手を振って病室の扉を閉めた。
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