【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「……どうせ、知ってんだろ? オレとしずくのこと……。潤平が、話したんだろ?」
「…………。」
「潤平の奴、何気に口が軽いからなぁ……。」
僕が頷くよりも先に、松江大地は言葉を繋げる。
ジッと視線を向ければ、参った、とでも言うように両手を上げて、歩き出した。
「とりあえず、公園でも行こーぜ。ここじゃ、ゆっくり話も出来ねえ。」
松江大地の後を続いて来たのは、少し離れた小さな公園だった。
「……オレが松江大地になって、初めて、しずくを見かけた場所だよ。」
「ここが……?」
「あぁ……。ここでオレは、しずくを見つけたんだ。」
地に咲く、一輪の黄色いパンジー。
まるでその時を再現するかのように、パンジーを手にした松江大地は、僕にそれを差し出した。