【完】一粒の雫がこぼれおちて。
当然だけど、僕はそれを受け取らない。
軽く苦笑いをした松江大地の手から、パンジーが風の抵抗を受けて、ゆっくりと地に落ちていく。
ひらりひらり。
「オレがしずくにコクったときは、こんなとこにパンジーなんて咲いてなくて。学校のパンジーを手渡したんだ。」
「へぇ? ……随分、ロマンチックだこと。」
どうでもいいけど。
「つれねえなぁ。いいじゃねぇか、ロマンチック。オレは好きだぜ。」
「アンタの好みなんて、聞いてないから。」
聞きたくもない。
そんな利益も無いこと。
僕の言葉にまたもや、松江大地は苦笑いを繰り返して。
地に落ちたパンジーを、ジッと見つめた。
パンジーの上に落ちるのは、一粒の小さな雫。