【完】一粒の雫がこぼれおちて。
やっぱり、彼は優しい。
眠りの浅い私だから、起こしてさえくれたら直ぐに起きた。
だけどそれが無かったということは、和泉くんは1回も私を起こさなかったということ。
こんな時間になってでも、和泉くんは私が起きるのを待っててくれた。
「……うれしい、な……。」
夕日のせいか、頬が少し熱く感じる。
私は空になった弁当箱と、落ちていたブルーベリーパンの袋。
そして和泉くんが忘れていった本2冊を拾い上げる。
本をギュッと抱きしめると、新鮮な紙の匂い以外に、ほんのり和泉くんの香りがする……気がする。
気がする、だけど。
ついさっきまで肩に掛かっていた和泉くんの学ランからは、ちゃんとはっきり和泉くんの香りがした。