【完】一粒の雫がこぼれおちて。
side 倉橋しずく
「あーあ……和泉くん、行っちゃった……。」
走り去って行った和泉くんの後ろ姿を見て、自分への呆れの溜息が出る。
さっきまで和泉くんがいた隣は、まだ少し暖かくて。
だからこそ、風に吹かれて寂しかった。
「……和泉くん。」
いつもそう。
私は加減を知らな過ぎる、らしい。
好きなものは好きで、嫌いなものは嫌い。
好きなものにも嫌いなものにもとことんで、私にとってそれは長所であり短所。
いつも、私はやり過ぎてしまう。
特に、好きなものには。
「……帰ろう。」
携帯を開けば、時間は4時半を過ぎていた。
こんな時間まで、和泉くんはずっと待っていてくれたんだ……。