【完】一粒の雫がこぼれおちて。
大袈裟に言って人間嫌いな僕が、コイツに好かれるようなことをしたとは思えない。
まず、コイツと今まで関わった記憶が無い。
何故僕に構うのかと聞いても。
コイツはいつも曖昧に言葉を濁すか、秘密と言って話題を変えるかだ。
今となっては、聞く気さえも起きない。
「和泉くん、和泉くん。あのね、数学で教えて欲しい所があるんだけど……。」
「何で僕が?」
「和泉くん、テストでいつも学年1位じゃん。」
「だから?」
「教えて?」
「却下。」
しかもコイツは隣の席だ。
授業中でない限り、コイツはずっと話し掛けて来る。
黙ることを知らないのか、コイツは。