【完】一粒の雫がこぼれおちて。





映っているのは、日なたで咲くいくつかの花と、空でギラギラと輝く太陽。


そして隅の日影で、本を読んでいる僕だった。



「……アイツ、いつの間にこんな……。」



こんなの盗撮と同じだ。



普段の僕が見ていたのなら、きっとこれ以上無いくらいにキレてたかもしれない。


だけど今は、いくらその写真を見ても怒る気は湧いてこず。


むしろ、軽い愛おしさが込み上げた。



「……おかしい。」



そう。


僕は最近、おかしいんだ。



おかしい。


いつもの僕じゃない。


今まで淡泊に生を過ごしてきた、僕ではない。



だから、きっと……。


「会いたい……。」



倉橋に対してそう思う僕も、おかしいんだ。





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