アナザーワールド
*
私はゆっくりと目を開けた。
私の目を攻撃するように、眩しいほどの太陽が差し込んでくる。
「くしゅっ……」
春麗らかな気候に、暖かな日差しに、私はいつのまにかうたた寝をしていたようだ。
すると、
「実亜? どうかしたのか」
そう言って私の顔を覗き込んで来るのは、幼なじみの海斗。
「……どうもしないよ」
「どうもしないって……実亜、泣いてるぞ……?」
そう言って海斗は私の頬を伝う涙をゴツゴツとした指で受け止める。
「えっ、うそ……」
自分の頬に触れてみて、確かめる。
確かにそこには涙の痕がある。
いいや、今もまだ溢れていた。
「怖い夢でも見てた……?」
怖い夢……?
私はゆっくりと首を振る。
そして海斗を安心させるように微笑んで、彼の腕に抱きついた。
「ううん、怖い夢なんかじゃないよ」
そう、怖くなんてない。
むしろ、幸せな夢だ。
なのに……。
「幸せな夢を見てたんだけどなぁ……。でも幸せって……時々、切ないね」
そう言ったら、再び頬を暖かいものが伝う。
泣きたくなんてないのに。
悲しくなんてないのに。
なのにどうして胸の奥が苦しくて、切ないんだろう……。
「……大丈夫。俺がそばにいるから」
そう言って、海斗は私の頭を優しく撫でて、それからそこにキスをした。