oneself 前編
「まぁまぁ、徹、すねんなよ」


そう言って笑う哲平。


あたしの、大好きな人。


そんな哲平の学ランに、チラリと目をやった。


ない…


第二ボタンどころか、上から下まで、袖の部分のボタンでさえも、ボタンというボタンは見当たらない。


やっぱり遅かった?


もう誰かにあげてしまった?


あたしが思ってるほど、哲平にとっては、第二ボタンなんて、大して意味のないものなの?


そんな疑問が、次々と浮かび上がる。


その時、暗くなっていくあたしを打ち破るかのように、徹が叫んだ。


「あ!哲平、例のやつ!」

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