oneself 前編
けれど、その日がきっかけで、あたしと彼は、顔を合わせば軽く話せるようになった。


諦めきれなかったあたしからしたら、見てるだけだった頃よりも、彼との距離が縮まった事が嬉しかった。


彼と一番話せる時間は、ほんの少しの、部活が始まる前の時間。


うちの高校はさほど部活動は盛んではなく、部活に励んでいる生徒は、学年の半分程度で、特に女子の割合は少なかった。


「俺、今から5km走らなあかんねん!」


「まじで?頑張れ!」


そんな些細な会話だけど、他の女の子達がいない場所で、彼と話せている優越感。


そしてあたしはこの頃から、彼を諦める必要はないし、今からでも頑張って、自分の事を知ってもらおうと、前向きになった。


彼は好きな女の子がいる気配はなかったし、昔と比べて、彼と話せてる今が、楽しかったから。


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