oneself 前編
「それでもな、周りの子らは、もっとすごいで?」


新作や期間限定の代物、時計やアクセサリーも高級なものばかりだと、香はため息をつきながら話す。


「さすがにそこまでは、真似出来ひんからな。せめて服だけはそこまでお金かからんし、頑張ってるけど」


香は香で、そんな苦労があったんだ。


あたしの通う大学は、四年生の女の子達はそれなりに派手だが、あたしの在籍する短期大学部介護福祉科は、どちらかと言えば地味な感じの子が多かった。


だからこそ、あたしは今日二人に会うまでは、何も感じる事はなかったのだ。


奈美はおしゃれだが、またそういった派手な感じでもなかった。


「でもさ、香バイトしてへんやん?服買うお金は?」


「バイトはそのうち始めるよ。いい加減やばいし…」


そう言って、少し声が小さくなる香。


「え?じゃあ今まで買った分はどうしたん?」


あたしの質問に、しばらくの沈黙。


「カードで買った…」


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