oneself　前編
そして週末。


あたしは奈美に誘われるがままに、またしてもサークルの飲み会に参加する。


最初は苦手だった雰囲気も、数を重ねる毎に慣れていったのと、それなりに楽しかったので、あたしはお酒を大量に飲み、すっかり出来上がっていた。


たまたまトイレに立った際に、携帯を開く。


不在着信１件。


携帯を開くと、仕事が終わったであろう数時間前に、哲平からの電話。


トイレは混雑していて、とてもじゃないけどここで電話をするのは無理だと思ったあたしは、お店の外に出て、哲平に電話をかけた。


プルルルル…


２コールほどの呼び出し音の後、哲平は電話に出た。


「もしもし…」


「哲平？どうしたん？」


「あんな…」


いつもより哲平の声が暗かった事。


家にいるはずの哲平の後ろが、騒がしかった事。


あたしは少し気になったものの、お酒に酔っていたせいもあり、何も言わずに次の哲平の言葉を待った。


< 87 / 245 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop