oneself 前編
あたしの問いかけに、沈黙が流れる。


「あんな…」


電話越しから伝わる、哲平の思い詰めたような一言。


あたしは黙って、その続きを待った。


「俺…」


「お~い、未来ちゃん!」


ようやく口を割った哲平と被るように、またしても後ろから、あたしを呼ぶ声が聞こえる。


電話してるって、言ってるのに。


イライラしながら、あたしを呼んだ声の主を軽く睨みつけた。


さっきとは別の先輩だった。


そんなあたしにおかまいなしに、先輩は慌てた様子で話す。


「奈美ちゃんが大変やねん、何か揉めてんねん!」


「はっ?」


「だから早く戻って来て!」


奈美が揉めてる?


でも、哲平が元気がないのも気になる。


どうしよう…


< 89 / 245 >

この作品をシェア

pagetop