咲かない花
頃合いを見計らって、俊子ちゃんと一緒に正門の方へ行くと、夏目くんは二宮先生と一緒だった。
今日の部活で彼の名前が出てきたせいか、いや、それ以上の「実験対象」だったせいか。
一瞬だけ足が止まってしまったけど、俊子ちゃんは気づいてないようだ。
彼らの姿を認めた俊子ちゃんは、はにかんだ笑顔になりつつ、パッと駆けだした。

「ごめーん。今日は早かったね」
「寒いし暗いから、あんま女子を外で待たせるなって言われて」と言った夏目くんの言い方は、少々ぶっきらぼうだったけど、その中に照れが入ってるのまでは、隠しきれてないようだ。

これも10代の恋愛。青春だよね。

高校3年生でありながら、「セクシーな正統派美人」という言葉がよく似合う俊子ちゃんは、その美形な顔に優しい笑顔を浮かべると、「ありがと」と夏目くんに言った。

その言い方は、やっぱり夏目くんより1つ年上って感じがする。

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