この恋、永遠に。【番外編】
 柊二さんと結婚して二年目の夏、私は待望の赤ちゃんを授かった。その報告に彼はとても喜び、相変わらずの過保護っぷりを発揮している。「妊娠は病気じゃないから」と何度言っても、彼は私の散歩にあまりいい顔をしなかった。

 ある日彼と一緒に行った定期健診で、適度な散歩が安産につながるということをお医者さまに説明してもらい、そこで初めて彼は納得してくれたのだ。
 それでもやはり心配なのか、彼は自分が散歩に付き合えないときは、お義母さんや孝くんの奥さんである真帆さんなど、誰かに一緒に行ってもらえるように頼んでいる。

 柊二さんいわく、私のお腹があまり目立たず、後ろから見ると妊婦であることが分からないから心配なのだそうだ。
 妊婦であることが一目で分かれば、周囲の人も気を遣ってくれるに違いないからだろう。
 柊二さんも、私の少し不自由な足を心配してのことだから、私は彼の言うとおりにしている。彼に心配はかけたくないし、彼の過保護ぶりは、彼が私を大切に想ってくれている証だと思えるから。柊二さんとの結婚生活は、毎日がとても満たされていて幸せだ。

「パスポートは美緒の分もまとめて俺が持っておくよ」

 柊二さんが言った。

「はい、お願いします」

 私が微笑むと、目元を和らげた彼はスーツケースをベッドから降ろし、代わりに私をそこに横たえた。漆黒の瞳に欲望を滲ませた柊二さんに、私は体の力を抜く。そのままそっとその広い背中に腕を回すと、私は彼に体を預けた。

 明日から三日間、私は柊二さんの妻として、本宮商事の社員旅行に参加する。近年、どこの会社でも社員旅行は減ってきているようで、本宮商事でも六年ぶりの社員旅行だと聞いた。行き先はグアム。少し旅費を足せば家族を連れて行くことも出来るらしく、既婚者は奥さん同伴で参加することもできる。妊娠中の海外旅行に私は少し不安を覚えたが、幸い既に安定期に入っているし、経過も順調だった。グアムなら近いからと、柊二さんはお医者様にも同行してもらう手はずを整えたのだった。

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