この恋、永遠に。【番外編】
 十一時過ぎに日本を出発し、グァムへは三時間半ほどで到着した。ボーディング・ブリッジが機体に接続され乗客が降りる準備を始めると、熱い空気が流れ込んできた。私は少し前に着替えた薄手のパステルイエローのカーディガンを脱ぐと手持ちの鞄にそれをしまう。日本を出るときに中に着ていた半袖の白いTシャツ一枚になった。

「美緒、降りようか」

「はい」

 柊二さんが私の鞄を持ち、空いている方の手で私の手を握った。彼も半袖のTシャツ一枚になっている。Tシャツから伸びた彼の筋肉質な腕とがっちりした手の感触に、未だに私の心臓はドキドキと鼓動を速めた。いつまで経っても私は柊二さんに恋をしている。

 柊二さんは飛行機を降りた後、スーツケースを受け取っても私の手を握ったままだった。そろそろ同じ便で来た他の社員も合流するというのに、彼は手を離すそぶりを見せない。社員旅行で来ているわけだから、手を繋いだままでいいのか不安になり、私は隣の柊二さんをちらりと見上げた。

「ん?どうしたの?」

 私の視線を感じた柊二さんがにこりと微笑む。私もつられて笑った。
 私が繋いだ手のことを言おうとしたちょうどその時、楽しそうにおしゃべりをしながらこちらへやってくる三十人くらいの団体客があった。見かけたことのある顔ぶれも混じっていることから、本宮商事の社員であることが分かる。彼らは私たちのところへやってくると「お疲れさまです」とにこやかに挨拶をくれた。私も慌てて「お疲れさまです」と返事をする。

 そして私たちの繋がれた手を見るなり、ショートカットが似合う上品な顔立ちの女性がにっこり微笑んだ。彼女の顔に私は覚えがない。
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