漆黒の闇に、偽りの華を


「あら。小娘は身に覚えがあるようね。」


「聖也。」


恭は、座っている聖也さんに近付き、
上から見下ろす。


「小娘じゃない。茉弘って呼べ。」


その威圧感に、聖也さんは一瞬たじろぐ。


「あんたさっきから何をカリカリしてるの?ずっとあたしには総長モードじゃない。」


「そうか?お前がややこしい事ばっか持ち込むからだろ。」


カタンと音をたてて恭が椅子に腰を下ろす。


「大体、その使い分け止めなさいよ!元はこっちが本性のくせして!」


「お前には関係ない。話脱線してるぞ。
で、結局何が言いたい?」


聖也さんは、大きな溜め息を一つ付いて話を戻す。


「要は、煌龍の総長に女が出来たっていう噂が広まってるって話。」


え?


それって……


「……あたし?」


「そう。あんたよ。
この間の不良グループの中の奴らが流したんでしょうね。この噂は、各族に回るの早いわよ。
何てったって、絶対に姫を取らないって言われていた男に舞い込んだ、女の影なんだから。」


絶対に姫を取らない?


"姫"ってのは……えーと……


「総長の女の事だよ。」

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