派遣彼氏
ヒソヒソ声や視線が身に刺さり、さっきとは違う恥ずかしさに襲われるのだ。


「どう、して…ですか?辞令なんて。そんな季節でもないですよね」


「君より秘書に相応しい人間に出会えたこと、君は秘書よりも私の同等な人間の元で働く方が都合が良いはずだ」


なぜ?私が?私は悪いことでもしたんだろうか。今まで真面目に仕事して、部長の右腕として活躍を応援していたはずなのに。


「今日中に荷物をまとめて部署を出るように」


庶務課の異動だった。雑用係と言われる課でエリートらしからぬ降格。何とも言えない絶望感だ。


追い打ちをかけるように、

「佐田先輩、花菱病院よりお電話を頂いてます」

部下だった人間から電話に変わり、病院からも聞きたくない内容を預かったのだ。
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