派遣彼氏
ニコニコからニタニタ笑う彼から離れようと立ち上がり、

「結局、用件は何だったんですか」

と告げる。



「あ、いや、別に何も無い。佐田を怒らせてしまったようだし、俺は退散させてもらうよ」


革靴を滑らすように、とても速いスピードで私から離れていく青野部長。よく分からない人だ、どうして私なんかと昼食を?


「嘘…ついちゃった」


気を重くしながら、部署に戻りデスクの席につく。部長に目を配ると、ぱっちりと目があって愛想笑いをした。すると、彼は目をそらして席を立ち、綺麗に折りたたんだ用紙を秘書の席に置いた。私の席に。



「今までありがとう。人事異動だ」
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