孤独 ‐哀しみの海底‐

「優成(ユウセイ)くん、
美波(ミナミ)のこと忘れないであげてね。」


美波の母親が僕に泣きながら微笑み
去っていった。



僕は
あれからしばらくの間、
美波と同棲していたマンションで
一人きりの時間を過ごしていたが、
あまり記憶がない。

食事も取らず
風呂も入らず、
ただひたすら
写真の中で笑う
美波を見つめていた。



とても
綺麗な顔立ちで
深みのある声。

白い肌に
彼女の、お気に入りのブルーの
マキシマムワンピース。



記憶の中で
彼女はいつも
僕の左隣で笑っていた。
僕の肩に顎を乗せて
後ろから抱きつくように。

ふと、
我に返るととてつもない孤独感と
時計の針音だけの
部屋。

彼女の居ない部屋は
彼女の好きなブルーのインテリアなどに
囲まれていたが、
僕独りだと殺風景に感じる。

彼女の元々持っている
産まれもったカラーが
この部屋では
一番必要だったことに気づいた。


彼女がテレビを見ながら
よく座っていたソファー。

料理を作るのに
献立を考えながら
料理本を見て立っていたキッチン。

二人でたまに一緒に入っていた
バスルーム。

僕たちは
ケンカなんてしない
仲の良いカップルだった。

いつか
結婚するんだな、彼女と。


頭の中では
そんな気がしてならなかったのに…。


なぜ彼女は
命を落とさなければいけなかったのか。


彼女の遺品を整理することも出来ず、
ただ
ひたすら
時計の秒針は進んでいく。



時間は戻らない。

彼女のいた時間に戻りたくても
時は無情に進んでいく。





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