ファインダー越しの恋
…それから数日。俺は、雑誌搭載の為の季節物の服の特集ページを任され、服を着たモデルの撮影に集中した。

写真撮影は、10日間続き、最終日。最後の一枚を撮り終えた。

「お疲れ様」
モデルの子に、笑顔でそう言う。

「お疲れ様でした、ヒイロさんが撮ってくれる写真が、私は一番好きです」
モデルの子はそう言って微笑んだ。

・・・彼女もまた、俺を男として意識している。・・・そんな目だった。

・・・それに気づかないふりをして、俺は機材の片づけに集中した。

「お疲れ様でした」
その声と同時に、目の前に差し出されたコーヒーの缶。

俺は驚きつつ、それを受け取ると、礼を言いながら、くれた人物に目を向けた。

「ありがとう・・・桜子ちゃん」
コーヒーをくれたのは、桜子だった。

ここにいるはずのない桜子がいる事に、動揺をしてしまった。

「隣の撮影現場に仕事出来てまして。…ヒイロさんも撮影してるって聞いたから、差し入れです。大したものじゃありませんけど・・・それじゃあ、私は仕事がありますので」

そう言うと、桜子は、そそくさと、現場を出ていく。・・・が。

誰かが、桜子を止めた。
…相手は男だった。…とても親しげで、桜子も、気を許している人物のようだ。

・・・男が、桜子の頭を優しく撫でた。

…俺はどうしようもないくらいの、怒りがこみ上げた。

気が付けば、2人の前まで行っていて、2人は、少し驚いている。

「…ヒイロさん?…あの、こちら、私の大学時代の先輩で、井上龍也さんです。龍也さんこちらは、うちの出版社で専属カメラマンをしてるヒイロさんです」

「…そうですか、桜子がお世話になってます」
そう言って頭を下げる龍也。

龍也の一つ一つの行動に、イチイチ腹が立った。
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