猫の恩返し
違う男と一緒に居たこと


「俺って何だったのかな…って………」


思い出すだけで惨めになる


『あ………桐吾、待っ───』


『何?』


『───っ』


『そんなに盛りてーなら、いくらでも他の男と盛ってろ』


自分が、ものすごくどうでもいい存在のように思えて…

それでも、アイツの前で弱い自分を見せたくなくて…

精一杯の強がりを吐き捨てて帰った

そう言った後、アイツの顔を見なかったから、最後にどんな顔をしていたのかも分からない

ただ───


俺を怒らせたことを後悔すればいい


そう思った

帰国してからは県警本部刑事部の捜査第二課長だったから、今頃は本庁かどこかで課長補佐にでもなっているだろう


「………警視…か…」


元々、俺達は付き合うべき立場の人間じゃなかったんだ
< 134 / 215 >

この作品をシェア

pagetop