猫の恩返し
「トーゴ、仕事は?」


「一週間有休もらった。だから、気にすんな」


「ごめんなさい」


悲しそうに揺れる瞳

こっちまで、気持ちが感染してしまいそうだ


「謝んなって。有休も消化しなきゃなんなかったし、ちょうどよかったよ。元気になったら、温泉行くか」


「うん」


昨日医者で言われたことをナツに伝えていいのか分からず、『元気になったら』なんて嘘を吐いた

重篤な患者の家族が、本人に言うかどうか悩む気持ちが痛いほど分かる


「いっぱい寝たし、お昼ご飯作るよ」


うーんと言って背伸びをし、俺の横まで抜け出してくるナツ


「大丈夫か?」


「ん?大丈夫。どしたの?トーゴらしくないよ」


ベッドの淵で足をプラプラさせ、俺を見上げる

一体、どこにそんな元気があるのだろう
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