猫の恩返し
「んなことねーよ。ずっと相手出来なかったから、この機会に一緒にゆっくりしようかと───…っ」


「えへへへへ。嬉しい」


俺の腕に両腕を絡ませ、頭を擦り付けてくる

どうやら、病院に連れて行ったことは記憶にないらしい


「温泉ね、雪見ながら入りたーい」


「寒いトコ行くのか?」


「風情があっていいじゃん」


「今年の冬はここらでも雪が降るんだし、わざわざ雪の降るトコなんて行かなくていいだろ。ってか、風情って…猫のくせに」


「いーじゃん!猫だって、綺麗なもの見て楽しみたいんですぅー」


あの医者の言うことは、間違いだったんじゃないか

ナツはこんなに元気で生意気だ


「はいはい」


「あー、バカにしてるでしょ!」


「してねーって。飯作るぞ」


「むー…。何か納得出来ないけど…でも………」


もごもごと口ごもるナツと一緒にキッチンに立ち、生まれて初めて手料理という手料理を作った
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