猫の恩返し
『死んだら星になるんでしょ?この丘からが一番空に近いのかな?ここに夜来れば、皆に会える?』


真剣な眼差しでそう言ったナツ


アイツが本当に星になったなら、夜あの丘に行けばまた会えるんだろうか…


線香に火を付け立ち上がった

傍にある大きな木から、蝉のけたたましい鳴き声が聞こえてくる

水を掛けた墓石を眺めていると、暑さのせいか辺りの空気が揺らめいていた


『トーゴ』


そう聞こえて黒い塊が横切ったような…

そんな気がして───

気になった方に視線を移した瞬間、女物のヒールが視界の端を通り過ぎた

誰かの墓参りかと顔を上げると、そのまま動けなくなる
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