猫の恩返し
△▼△▼△▼



「終了っ!」


カラカラと椅子を鳴らし、牧野が立ち上がったのが7時半


「よしっ!ナツちゃん、行こ」


「トーゴは?」


牧野の言葉に、パソコンをいじり倒してたナツが顔を上げたのが、視界の端に入る


「俺はまだ仕事。昨日も休んだし、当分帰れねえよ」


「じゃあ、待ってる」


再び視線を落とした


「小岩井主任から言付(ことづ)かってるから、今日は私と一緒に帰ろ、ね?」


「こと…づ…?でも………」


戸惑いながらチラッとこっちを見るナツ

仕方なく俺も書類から顔を上げ、ナツを正面から見た


「今日は牧野んトコで世話になれ。いーな?」


「えっ…」


瞳が揺れたのを見て、思わず顔を背ける

泣きそうな顔を見ると、せっかくの決心が揺らいでしまいそうだから


「主任もああ言ってることだし…帰ろ?」


ナツの腕を取り『お疲れ様でーす』と、引きずるようにして帰って行った
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